前回は「ソーラー&人力ボートレース全日本選手権大会2009」の様子をご紹介しました。

今回は、そのレースに参加していた「K上さんの自作チタン艇」の詳細を
ご紹介させていただきます。

前回の記事→ http://blogs.yahoo.co.jp/corsa2003sp/33364187.html

※記事の中のコメントは全てコルサによるもので事実とは違う可能性があります。
 (K上さんの考えと違うかもしれません。その時はごめんなさい。 笑)



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21日の一時間耐久レース出場直前の一枚。
中央が製作者であり選手でもあるK上さん、向かって左がkokoさん、右がコルサ。
(他のみんなは、どこに行っちゃたの?)



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K上さんが参加されているのは「人力」によるクラスです。
この画像を見ても普通の方は特に何とも思われないと思いますが・・・

人力艇で、この外観を構成するのは実は大変なことなのです。
それは、なぜかといいますと・・・



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通常、人力艇ですと上の画像のような構成が普通です。

大雑把に言えば
①通常の自転車のポジションか
②リカンベント(寝そべるスタイル)
に大別されます。
この両者に共通するのは、回転運動により推進力を発生させていることです。
この方法は自転車として完成されている効率の良い方法といえます。
ただし、問題は170ミリ前後の半径のクランクを回すスペースが必要だということです。
(ペダル中心の直径で340ミリ+靴などを含む回転スペースが必要になる)
その為、重心が高くなったり空気抵抗(向かい風の影響も)が
大きくなるというデメリットがあります。
リカンベントスタイルでは、ポジションが低くなり上記のデメリットは
多少、緩和されることになります。



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K上さんは、その回転運動によるスペースより、ずっと小さなスペースで駆動力を生む機構を考えて
コンパクトにまとめた船体を実現するべく設計したようです。

それを実現する為のアイディアが今、取り外されて公開されようとしています!



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回転運動ではなくペダル?を前後することによって推進力を生み出す機構になっています。
(下側の画像では画像右側が後ろ側にセットされる) 



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これがペダル部分。
ここに足を突っ込んで前後に動かすシステムです。
この画像はレース後のものなのですがトラブルが発生してペダルが少し外に開いてしまっています。
レールガイド回りの強度が足りなかったようで無理が、かかりレールガイドに入れてあった
ベアリングが脱落してしまったようです。

足を乗せる部分が微妙にカーブしている点にも注目。
もちろん、靴を履いて乗りますが靴底の微妙なカーブに合わせて?作られています。

ちなみに、このメカは試作段階でチタン製ではなくステンレスをメインに作られているそうです。



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足を前後させて推進力を発生すると書きましたが、それも簡単にはいきません。

たとえば右足を前に出した時に有効な力が発生するとします。
しかし今度は右足を引き戻す時には、
何も工夫がなければ逆の力が発生してしまうことになります。
そのままではスクリューが右に回ったり、左に回ったりを繰り返すのみで、
船は前には進めないことになります。

この部分に、それを防ぐ秘密があるはずです。
何らかのシステムによりワンウェイのクラッチ機構が組み込まれており画像手前の
小スプロケット部分は一定方向の力しか伝えられず当然、一定方向にしか
回転しないようになっています。
K上さんは、この機構を秘密にしていた訳ではなく皆さんの質問に答えていいましたが、
あえて秘しておきます。
実はコルサが理解できなかっただけだとか(笑)



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そして、垂直のシャフトに伝わった力は方向をギヤにより90度変え
スクリューを回します。



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この中に仕込まれるギアボックス自体は市販の防水の物とのことで、
なおかつギヤ比が違うものに変更が可能だそうです。

このケース部分も、もちろんK上さんの自作。
微妙なアールで構成された、この部分を板金しにくいステンレス製で作る為、
本人は特に何も言わないものの、かなりの力作(苦労の作)に間違いないと思われます。



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その他の部分も見てみましょう。
これは船体後部のラダー部分。
先端の「かじ」部分は木製でした。
ちなみにラダーユニットを船体に止めているのは5ミリ径程度の4本の樹脂製ボルトでした。



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ラダーを動かすのはシマノ製シフトレバー。
シマノ製を使っているのは、やはり自転車部品だけでなく釣具メーカーでもある点を
考慮してのものでしょうか(笑)
(コルサが高校生の頃、サンツアーとシマノなら釣具も作っているシマノの方が雨に強いといわれていたのだ)
このフリクションレバーは舵を効かせた状態で手を離せるのが利点と言っていました。
なるほど、乗った人でないと気が付かないポイントですね。



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船体を裏側から見てみると・・・3分割?構成のようです。

前後を、それぞれチタン板から作り出し中央パネル部分で接合するという思ったより簡単で
合理的な構成で作られています。
先端側は一枚のチタン板からアールをうまく出してスリムに作り、後部は3枚を合わせた?スクエアな形状です。



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船体上部の様子を見てみます。
前後部分はデッキが貼られることにより強度も確保されています。
中央のオープン部分は板部分の上部に沿ってパイプが渡されて強度と安全性を両立しています。
中央部分に一本、左右を結ぶ部材が入っているのも見えますね。



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艇の両側に付くフロート部分。
これもチタンの薄板で作られていて非常に軽量でした。


この船、ほとんどをK上さん個人で作られています。
溶接は本業だそうですが、このような物を形にするのは大変な労力だと思います。
また、今回は駆動系部分の新アイディアなどもあり設計から形にするのは
更に大変だったのではないかと思われます。
今回は新しいユニットにトラブルも出てしまったようですが来年のレースまでには、
より完成度の高い物に熟成されるのでしょう。


K上さん、本当にお疲れ様でした。
来年も、愛知県で行われるのでしたら、また応援に駆けつけたいと思っています。